バンコク住宅市場、「住宅価格の高騰」が購入の大きな壁に
バンコクポストの記事と私見を交えて下記にご案内いたします。
バンコクの住宅市場は、新たな局面を迎えています。
現在、住宅購入における最大の障壁は「住宅供給の不足」ではなく、住宅価格が消費者の購買力に見合わなくなっていることです。この状況を背景に、住宅購入希望者の関心は中古住宅や賃貸住宅へと移りつつあります。
クルンタイ銀行の産業・経済調査部門「Krungthai Compass」のシニアアナリスト、Kanit Umsakul氏によると、住宅価格の上昇が所得の伸びを上回り続ける中、住宅の「購入しやすさ(アフォーダビリティ)」が住宅市場を左右する重要な問題となっています。
Kanit氏は次のように述べています。
「住宅需要は今後、中古住宅や賃貸住宅へとさらにシフトしていくでしょう。これらの住宅は、消費者の購買力により適しているためです」
住宅価格の上昇率が賃金上昇率を大きく上回る
Krungthai Compassの調査報告書によると、バンコクで新規販売された住宅の価格は、2012年から2025年までの期間に年平均4.3%(年平均成長率)で上昇しました。
一方、労働者の賃金上昇率は年平均2.8%にとどまっています。
つまり、
住宅価格:年平均4.3%上昇
賃金:年平均2.8%上昇
となっており、10年以上にわたり住宅価格の上昇が所得の伸びを上回っています。
賃金そのものは上昇しているものの、住宅価格の上昇には追いついておらず、特に中間所得層にとって住宅を所有することが以前より難しくなっています。
Kanit氏は、
「住宅価格と購買力のギャップによって消費者の行動が変化しています。購入者は以前より価格を重視するようになり、新規開発物件ではなく、より価格の安い選択肢を求める傾向が強まっています」
と指摘しています。
中古住宅の存在感がさらに拡大
Krungthai Compassは、今後、中古住宅が住宅需要に占める割合をさらに拡大すると予測しています。
中古住宅は一般的に新築住宅より価格が安い一方、すでに生活環境やインフラが整ったエリアに立地している物件も多いためです。
報告書では、2026年のバンコクにおける中古住宅の所有権移転総額は1,950億バーツに達すると予測されています。
これは住宅所有権移転総額の約40%に相当します。
中古住宅が占める割合は、
- 2019年:30%
- 2022~2023年:34%
- 2026年:約40%
と着実に拡大しています。
中古住宅の平均価格については、2019年の1戸当たり217万バーツから、2022~2023年には240万バーツまで上昇しました。
しかし、2026年には約220万バーツまで低下すると見込まれており、予算を重視する住宅購入者にとって中古住宅の魅力が高まっています。
→デベロッパーは土地価格、建材費、人件費高騰から新築価格を下げるのは難しいかと思われますが、中古住宅はそもそも購入した価格が現在の新築価格の7割程というものも多く且つ各オーナーの事情により割安なものが出ているケースがございます。
住宅を「買えない」層が賃貸市場へ
住宅購入の難しさは、タイの賃貸住宅市場の拡大にもつながっています。
近年、インターネット上で賃貸住宅を検索するユーザーは継続的に増加しています。
Krungthai Compassは、バンコクの賃貸住宅供給戸数について、
- 2022~2023年:約33,000戸
- 2025年:約48,000戸
- 2026年:約50,000戸
まで増加すると予測しています。
特に賃貸需要が強いのは、月額10,001~30,000バーツの価格帯です。
この価格帯は賃貸市場全体の**44%**を占めています。
価格帯別に見ると、
- 月額10,001~30,000バーツ:44%
- 月額50,000バーツ超:27%
- 月額30,001~50,000バーツ:20%
- 月額10,000バーツ以下:9%
となっています。
このデータから、バンコクの賃貸住宅供給は、中価格帯から高価格帯の物件に集中していることが分かります。
→検索ベースかと思いますが月5万バーツ超えが27%もいるとは驚きです。私の感覚では月1万バーツ以下が30%以上いてもおかしくないと思うほど、月1万バーツ以下の物件に対する問い合わせがタイ人,外国人を問わず多いです。
家計債務・出生率低下なども住宅市場の課題に
住宅価格の問題だけではありません。
Kanit氏は、タイの住宅市場には構造的な問題が引き続き存在していると指摘しています。
その代表的な要因として、
- 高水準の家計債務
- 外国人観光市場の回復鈍化
- 出生率の低下
などが挙げられています。
これらの要因はいずれも、長期的な住宅需要を押し下げる可能性があります。
さらに、地政学的な不確実性も継続的な外部リスクとなっており、消費者心理を悪化させ、住宅購入の決断を先送りさせる要因になっているとKanit氏は警告しています。
一方で、
「こうした逆風がある中でも、新規供給だけで競争するのではなく、消費者に明確な価値を提供できるデベロッパーには依然としてビジネスチャンスがあります」
としています。
バンコク住宅市場は「K字型」へ
今後の住宅市場は、すべてのカテゴリーが同じように回復するのではなく、成長する市場と低迷する市場が分かれる「K字型」の市場構造がより鮮明になると予想されています。
比較的好調な市場として期待されているのは、
高級住宅、高価格帯の開発物件、中古住宅、賃貸住宅、そして中国以外の外国人購入者による需要です。
一方、一般大衆向けのマスマーケット物件や、他のプロジェクトとの差別化が十分にできていない物件については、より厳しい市場環境になると予想されています。
Kanit氏は今後のデベロッパー戦略について、次のように述べています。
「市場全体の回復に期待するのではなく、消費者の購買力が依然として厳しい状況にある中、デベロッパーは購入しやすい価格設定、商品の差別化、そして変化する消費者ニーズに適したプロジェクトによって競争していくことになるでしょう」
→一般層が求めている「家族で住めて、300万バーツ以下」という物件が供給出来ないので、バンコクで現在進行中の新築プロジェクトは富裕層向けに振り切って1億円クラスは当たり前で10億円以上するものが多くなっております。
バンコク不動産市場は「購入できる価格か」がより重要に
今回の調査から見えてくる大きな変化は、バンコクの住宅市場において、単純に「新しい物件を供給すれば売れる」という時代から、購入者の実際の購買力に合った物件が選ばれる市場へ変化していることです。
2012~2025年の間、住宅価格の上昇率が賃金上昇率を上回り続けたことで、特に中間所得層にとって新築住宅購入のハードルが高くなりました。
その結果、比較的価格の安い中古住宅や、購入せずに住居を確保できる賃貸住宅の存在感が高まっています。
今後のバンコク不動産市場では、**「新築か中古か」という違い以上に、「その価格が実際の購買力に見合っているか」**が、購入者の判断を左右する重要なポイントになっていくと考えられます。
