【タイ不動産市場2025】在庫増と販売不振が招く「土地購入競争の減速」——過去20年で最悪の局面へ
タイ不動産の仲介業者として、このようなブログ記事を連発して出すのはどうかと思うのですが事実である現状をお伝えするため下記にバンコクポスト記事の和訳をご紹介いたします。
バンコクポストの記事と持論を少し加えてご紹介します。
下記バンコクポスト記事引用
タイ・バンコク首都圏の不動産市場では現在、在庫の増加、販売の減速、デベロッパーの資金繰り悪化という3つの要因が重なり、土地購入競争が著しく冷え込んでいる状況にあります。これは、過去20年で最も厳しい市況とされており、市場の構造そのものに影響を与えつつあります。
「誰も競り合わない土地市場」—異例の事態
上場住宅デベロッパー Supalai(スパライ)のマネージングディレクター、トリテチャ・タンマティタム氏はこう語ります。
「私がこの業界に入って16年になりますが、土地購入において他社と競合しないというのは初めての経験です。」
実際に最近の土地取得ミーティングでは、30区画の土地をリストアップして調査したところ、他社の入札希望はゼロ。1件も競争が発生しなかったとのことです。
→新築コンドミニアムで投資用でこれはお勧め!というプロジェクトは私も今はありません。
ウドムスックエリアに大型オフィスを伴う複合施設やバンナーのバンコクモールなど、住宅以外で進んでいるプロジェクトがありますがそこの近くにコンドミニアムを建設しても購入のメリットは無く、デベロッパーとしても売る自信は無いと思います。
タイ全体で見るとまだまだ発展途上国のイメージがありますが、バンコクは都心部を中心に狭いエリアで十分に発展し商業施設、オフィス、住居、医療公共施設などは供給過剰状態です。
新規供給・販売ともに急減、在庫は増加
不動産情報センター(REIC)のデータによると、2025年第1四半期の新規住宅供給数は13,867ユニット、総額840億バーツで、前年同期比で供給数は15.6%減、金額ベースでは30%減という深刻な落ち込みを記録。
-
販売戸数:11,314ユニット(前年比29.3%減)
-
販売金額:684億バーツ(前年比25.6%減)
これにより、売れ残り住宅の総数は237,571ユニット、総額1.45兆バーツにまで膨れ上がり、**在庫消化にかかる期間は64か月(前年は40か月)**と、約60%も長期化する見通しです。
デベロッパーの資金繰り難、土地放出も加速へ
上場デベロッパー Eastern Star Real Estate のマネージングディレクター、パイロット・ワッタナワロドム氏は、今後について次のように述べています。
「社債の発行が難しくなったデベロッパーは、土地を手放すしかない。負債依存の成長モデルでは、この局面を乗り切るのは困難です。」
つまり、継続的な収益基盤を持たない企業は、プロジェクトを凍結・縮小し、土地を処分して現金化せざるを得ないというのが現状です。
→2020年以降バンコクでも新築コンドミニアムの着工を見ることがほとんどなく、デベロッパーは今後どのようなビジネス展開を行うのか気になります。
日本と違い地方都市に土地開発を行うことがタイではほぼありません。バンコクとバンコク近郊を除いてはパタヤ、プーケットくらいです。非常に限られたエリアで開発を行う必要があり、そうすると天井もすぐに見えてきます。
建設資材業界にも波及、納品延期が常態化
こうした開発停滞の影響は、建設資材業界にも波及しています。プレキャストコンクリートを製造・販売する Inno Precast は、複数の住宅開発業者から納品延期の要請が相次いでいると報告しています。
「この20年で最悪の市況」と専門家が断言
トリテチャ氏は、現在の住宅市場を「この20年で最悪」と断言します。
「2017年には年間12万戸が売れていましたが、現在は6万戸。仮に回復しても8万〜10万戸までで、かつての水準には戻らないでしょう。」
アジア通貨危機(1997年)以来の厳しい状況に近づいており、家計債務の高さ(約90%)が購買力を圧迫。金利がそこまで高くないにもかかわらず、需要が回復しない状態です。
→私の印象では現在の販売戸数が最盛期の1/2だとは思えないです。1/3と言っても不思議ではない印象です。
市場低迷の中でチャンスを掴むのは「財務体質の強い企業」
「厳しい局面ではありますが、財務基盤の強い企業にはチャンスもあります」とトリテチャ氏は語ります。
今後は新規供給も限定される見通しで、市場が回復した際に物件供給ができる会社がシェアを獲得するという構図です。
「供給は少なく、需要はまだ残っている。この状況で生き残れる企業こそ、次の成長の主役になります。」
→数年後にはいくつかのデベロッパーは淘汰され、生き残ったデベロッパーに大きな利益がもたらされる可能性が高いかと思います。
まとめ:タイ不動産市場は今が正念場
タイの住宅市場は今、低成長・高債務・在庫過多・資金難という四重苦に直面しています。
しかし、その中で生き残りを果たした企業には大きな優位性がもたらされるでしょう。
今後の市場動向を読み解く鍵は、
-
在庫処分の進捗状況
-
土地の値下がり動向
-
融資環境の変化
-
財務力のある企業の動き
これらにあります。投資家や業界関係者にとって、市場の底打ちを見極める目が試されるフェーズと言えるでしょう。